あさひ

ぐうぞう

先週まで、同じ学部の教授のお手伝い (手当は出たのでアルバイトのようなものですが) で、アーカムや周辺の町にある古い建物の装飾とかそういったものを写真に撮って収集する、という仕事をしていました。そのときに、こんなものを発見。 やや別角度から。 …

わたしのかお

シート式の顔パック (というのかな? 顔に貼って保湿とかするやつ) ってありますね。(ニシちゃんが持ってるはずだから実物の写真を撮らせてもらおうとおもっていたら、ついこのあいだ最後のをつかい切ってしまった、とのことだったので、やや不気味な絵での説…

わたしのて

私の手は、甲がわからみるとこんな感じなのですが、 ほかの人のとくらべると、水かきというのか、指と指のあいだの皮が多めについているようで、 まあ、べつに不便とかはないのですが、ただ、指輪をしようとすると、こんなふうになって、 変になってしまうの…

11月15日、土曜日。(その12: 終)

その週が終わるころになって、私はすこしずつ回復してきた。 けれども、まだ本調子にはほど遠く、そのあとも1週間、寝たり起きたりをくりかえした。 楽しみにしていた感謝祭の休暇も、ボストンへの買い出しも、すべて棒にふることになってしまった。 魚人に…

11月15日、土曜日。(その11)

インスマスの町から、インターチェンジまで。車ならば15分もかからない距離のはずだが、1時間以上は歩いただろう。 体はすっかり濡れ、冷えきってしまっていた。 道路がすこし登り坂になっているところを越えると、降りしきる雨の幕のむこうにぼんやりと、ガ…

11月15日、土曜日。(その10)

悲鳴が漏れそうになるのを両手で自分の口に蓋をしておさえながら、私は路地の奥へと後ずさりした。 街灯が投げかける光の輪の中に、その姿ははっきりと浮かびあがっていた。 集団の、残りの数人。 彼らは二足歩行はしているものの、異様なくらいのがに股で、…

11月15日、土曜日。(その9)

リュックサックを背負って、ふたつある窓のうちの、ひとつの前に立つ。 カーテンをかきわけて、外を見る。 部屋が面しているホテルの裏庭は、常夜灯のオレンジ色の光で満たされていた。 雨は今は降っていないようだ。 窓のすぐ下あたりの、壁沿いに目を走ら…

11月15日、土曜日。(その8)

私は布団の中で、自分の腕で自分の体をきつく抱いた。動悸がはげしくなって、両足がぶるぶる震えているのが、寝た姿勢のままでもわかった。 廊下の声が議論していたのは、この部屋のことだ。私のことだ。 203号室の客――というのは、夕食時に会ったあの女性だ…

11月15日、土曜日。(その7)

ホテルの自室に戻ると、本格的にやることがなくなってしまった。 9時を過ぎているから、夜もまだ若い、とは言えないかもしれないけれども、寝てしまうにはまだ早い。暇になったときのために、短編小説集も持ってきてはいたのだが、なぜか今日は、それを読む…

11月15日、土曜日。(その6)

若い警察官が出ていくと、食堂の主人はキッチンに引っ込み、私はひとりで食事を続けることになった。 すこし水っぽく感じられるトマト味のスープを飲みほして体をあたため、焼きすぎて硬くなったパティと、しなびかけたレタスが、ふにゃふにゃのパンにはさま…

11月15日、土曜日。(その5)

すこし早かったけれども、夕食をとりにいくことにして、ホテルを出る。それくらいしか、できることが考えつかなかったのだ。 といっても、インスマスの中心街には、味はほとんど期待のできない食堂が1軒あるきりで、その食堂はホテルから道を渡ってすぐのと…

11月15日、土曜日。(その3)

ホテルのレセプションで名前と電話で予約をしたことを伝えると、カウンター内の男は、チェックインの書類のほかにもう一枚、ペンで数文が殴り書きされているしわだらけのメモ用紙を突き出してきた。 男が一切の説明をしてくれなかったので、はじめ、それが何…

11月15日、土曜日。(その2)

私が後方に近い席に腰をおろすとすぐに、やかましい作動音とともに自動扉が閉まり、バスは発車した。 外装の様子から予想したとおり、運転手がアクセルを踏みこむと、エンジンの振動が直接座席にまで響いてくるようなおんぼろの車体だったけれども、慣れとい…

11月15日、土曜日。

午後の1時過ぎ。 私はアーカムの中心街にあるインディペンデンス・スクエアから道路を一本へだてたところの建物の、せまい軒下に身をよせて、バスを待っていた。 朝から、小止みになったり、大降りになったりをくりかえしながら降りつづいている雨で、目のま…

でかける

所用でインスマスまでいってきます。くわしくは帰ってきたら書くとおもいます。 バスに乗り遅れないようにしないとなー。 ↓ ウェブ拍手ボタンです。いつも拍手くださっているかた、ありがとうございます。はげみになってます。

金曜日

金曜日。私は正午すこしまえに、アーカムの鉄道駅に行った。 12時台の発着は、12時19分着、21分発の上り電車が一本だけ。やたらと大きな駅舎の一角にある待合室は薄暗く、がらんとしている。等間隔に置かれている長椅子には、まばらにしか人が座っていない。…

手紙

きのう(水曜日)、学校から帰ってくると、速達の郵便がとどいていた。 差出人をみてみると、件のミスカトニック大学を退官した教授。最近は手紙のやりとりが途絶えていたので、1ヶ月ぶりくらいに受けとる通信ということになる。 この教授といえば、非常に流麗…

手紙 その5

私が楼家島で撮影した写真がきっかけで手紙をやりとりするようになった、ミスカトニック大学の元教授。8月のはじめころ、すこしだけやりとりが途絶えたのですが、その後、二度ほど封書がとどきました。 8月半ばにとどいた一通めは、いままで私たちのあいだの…

しらべもの

土日はニシちゃんの手伝いをしていて時間を割くことができなかったのだけれども、先週受けとった手紙の内容で気になることがいくつかあったので、すこし調べものをする。 インスマス。アーカムの隣にあるこの町は、大学の図書館に残っている昔の新聞などによ…

手紙 その4

ふたたび、例の元ミスカトニック大学教授から封書が届いた。前回返信先として指定されていた私書箱が、差出人の住所として今回も書かれている。開いてみると、あいかわらずの達筆な筆記体が便箋を埋めている。 書状の内容は、だいたい次のようなものだった。…

手紙 その3

夕方、ニシちゃんとわかれて帰宅すると、見慣れた流麗な筆記体であて先の書かれた封書が郵便うけに入っていた。例の元ミスカトニック大学教授の筆跡である。 楼家島の写真を再送したのは、つい昨日のことなので、その返信にしては早すぎる。不思議におもいな…

手紙 その2

先週(手紙 - アーカムなう。 (ミスカトニック大学留学日記))手紙を出した、ミスカトニック大学の元教授から返事が届く。どきどきしながら開封したのだが、入っていた便箋に書かれていた文章は短いものだった。 手紙は届きましたが、あなたが同封したと書いて…

手紙

火曜日の夜、指導教官からメールで呼び出しがくる。水曜日、何時でもいいからオフィスまで来るように、とのこと。めったにない(たぶん、いままで一度もなかった)ことなので、なんだろうとおもいつつ(怒られるんだろうか、という不安も半分)、行ってみると、…

窓に! 窓に!

何者かに追われていることに、私は気がついていた。 天文館のアーケードの雑踏の中。実家近くの商店街。最寄りのバス停から実家に帰る途中の、石垣のあいだの細い道。ふと視線を感じてふりかえると、そこに実体のあるものはなにもない。けれども、誰かが、あ…

さとがえり

博士論文の事前調査のほかにもうひとつ、楼家島に行った理由があったのだ。 私には、6歳上の兄が、ひとりいる。その兄は、去年の春、結婚した。しかし、私はその相手に、一度も会ったことがなかった。それについては、アメリカに行ったまま、なかなか里帰り…

祖母の形見

仏壇のいちばん奥に掲げてある仏様の絵姿の、足もとあたりのところに、それはいつも置かれているのだった。 白みがかった金色の金属でできたその物体は、高さ3センチメートル、幅5センチメートルほどで、手前にむかってゆるやかに湾曲している。両端は、そこ…

私も帰る。

「帰ろう」「いっしょに行こう」 そんな声が私の頭の中でくりかえされるようになったのは、ここ数日のことだった。 それは、5年ほど前、桜島フェリーにひとりで乗っていたときに聞いたものにとてもよく似ていて、母や父に呼びかけられているかのように、私に…

Innsmouth再訪

春休み最終日の日曜日、私はアーカムとインスマスをむすぶ州道に車を走らせていた。 州道といっても、このあたりでは中央線すらも剥げかけた片側1車線のぼろぼろの舗装道、ところどころ、どこに続いているのかもわからない分岐線があるほかは、冬枯れの茂み…

夢の話

私は午前3時30分鹿児島港発の、ほかにはほとんど乗客のいない、がらんとした桜島フェリーのデッキに立って、手摺りによりかかり、10メートルほど下でゆっくりと波打っている暗い海面をぼんやりと眺めていた。船は全行程15分の航路のちょうど半分あたりまで達…

Innsmouth行ってきました

昨日の日記に書いたように、今日はInnsmouth(インスマス)のアウトレットモールに買い物に行ってきました。ルームメイトと、私の友達ひとりもいっしょでした。モールはあいかわらず空き店舗も多くて、時期のわりには混んでもいなかった。お目当てのGAPに行っ…