手紙 その3

夕方、ニシちゃんとわかれて帰宅すると、見慣れた流麗な筆記体であて先の書かれた封書が郵便うけに入っていた。例の元ミスカトニック大学教授の筆跡である。


楼家島の写真を再送したのは、つい昨日のことなので、その返信にしては早すぎる。不思議におもいながらも開封してみた。あいかわらず達筆すぎるうえ、今回は急いでしたためたとみえ、判読するのにより時間がかかる字体だったが、それほど長い文章ではなかったこともあって、ほどなくして読み終えることができた。


ただ、その内容は、いまいち真意をはかりかねるものであった。「先日こちらから送らせていただいた2通の手紙はそちらに届いているでしょうか。1通は、あなたからの封書に写真が同封されていなかったことを告げたもの、もう1通は、私の研究の詳細を記したものです。(後者は、前者よりも先に投函しました。)どちらか、あるいは両方ともを受け取っておられないようでしたら、至急、次のアドレスにあてて返信ください」


返信先として書かれていたのは、私のしらない町にある郵便局の、私書箱のアドレスだった。彼がいま住んでいる町とも別の場所だ。けれども、そこに返信するべき理由が書いてあるわけでもなく、よくわからない。ただ、とりあえず、私は「もう1通」のほうの手紙を受け取ったおぼえはない。それに、字は明らかに彼の手によるものだし、誰かが私を欺こうとしているとはとてもおもえない。(そんなことをしてなんの意味があるだろうか。)返事だけはしておいたほうが親切なのだろう。(もっとも、私のアパートでは、よく郵便物がほかの部屋に誤配されていることがあるので、念のためそのことも書き添えておこうとはおもう。)


(手紙 - アーカムなう。 (ミスカトニック大学留学日記)手紙 その2 - アーカムなう。 (ミスカトニック大学留学日記)からつづいてます。)