しらべもの

土日はニシちゃんの手伝いをしていて時間を割くことができなかったのだけれども、先週受けとった手紙の内容で気になることがいくつかあったので、すこし調べものをする。


インスマスアーカムの隣にあるこの町は、大学の図書館に残っている昔の新聞などによると、20世紀の初頭、2度ほど疫病におそわれているらしい。その影響か、それとも、ほかに理由(住民が異端の宗教を信仰していた、とする文献もある)があるのかはわからないが、インスマスの住民の多くが独特な風貌をもっていた、とする記録や報告が、ほぼおなじ時期にいくつか作成されている。ミスカトニック大学元教授からの手紙にあった、「インスマスの外見」(the Innsmouth look)という表現は、その特徴的な外見をさして(おそらく差別的に)使われたものだったようだ。そして、「インスマスの外見」の内容は、文献間でほぼ共通している。「細長い頭と平らな鼻、それに、奇妙に顔の両側に離れた、ぎょろりとした目」。元教授の手紙の文面に書かれていたものとも一致する。


そして、これらは、楼家島(るいえしま)の住民の一部が持っている外見的特徴とも多少似ている。「細長い頭」の部分は完全にはあてはまらないが、私の兄もそうであるように、「平らな鼻」と「顔の両側に離れた、ぎょろりとした目」をした住民は多いといわれているし、実際私も何人か見かけた。(さらにいえば、私も、兄ほどではないが、そういった特徴を受けついでいるとおもう。)


インスマスの外見」。楼家島。私の家族……。


「うひゃあっ」


左耳のあたりに熱気を感じたかとおもうと、次の瞬間、突然、背後から左肩をつかまれて、私は椅子から飛び上がるほどおどろいた。おもわず、叫びごえをあげてしまう。それから、そこが図書館の閲覧室だったことに気づいたけれども、もうあとの祭だ。恐る恐る、周囲を見まわすと、非難がましい視線が部屋中からそそがれているのがわかった。


「ごめん。そんなにびっくりするとはおもわなかった」


ひそめた声に、ふりかえると、そこには学部の女友達が、ばつの悪そうな顔で立っていた。


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