Sakura Sakura

今年、日本は冬が厳しく、雪が多かったり、関東あたりでもなかなか暖かくならなかったりなようですが、アメリカ東部、中西部は逆に暖冬で、特にここ数週間は、まだ3月半ばなのに5月〜6月くらいの陽気になったりもしました。


このあたりの桜は、ふだんは関東地方よりも遅く、4月中旬ごろに見頃をむかえるのですが、今年は日本各地に先駆けて早くも満開になり、そのあと雷雨が来たせいもあって早々に散ってしまいました。



これは、ちょうど満開ぐらいのときの写真。


アメリカで桜というと、ワシントンDCのそれが有名です。毎年、桜まつり (National Cherry Blossom Festival) が開催され、今年は特に、最初の植樹がおこなわれた1912年から100周年、ということで、いろいろなイベントが企画されているようですが、そのDCの桜も、今年は祭の期間のまえに咲きはじめ、ちょうど3月20日の初日あたりに満開だったとか。例年だと、4月上旬が開花のピークになり、桜まつりの期間も、それにあわせて設定されているようなのですが。


ところで。


「桜の木の下には屍体が埋まっている」と、よく言いますね。桜の花が、あんなに美しく咲くのは、根元に埋まった死体から養分を吸い上げているからなのです。


逆にいうと、なにもない場所に桜の木を植えても、根付きはしても、きれいな花を咲かせるには至らない、ということです。いまからちょうど100年まえ、日本からワシントンDCに3000本の桜が送られたときにも、そのことが問題になりました。そして、解決策として、桜の苗木とともに、おなじ数の死体を日本から届けることになったのです。


1912年当時、日本―アメリカ間の交通手段は船、および陸路しかありませんでした。その長旅のあいだ、3000体の死体を管理し、鮮度を保つのは容易なことではありません。それに、それだけの数の棺を船や鉄道に積み下ろしする人手の確保も、簡単ではありませんでした。そこで、日本から、さまざまな死霊術の遣い手たちが同行することになりました。


彼らは、3000体の死体を操って、桜の苗木とともに阿波丸に乗船し、シアトルで上陸。そこからワシントンDCまで、陸路で死体を引き連れていったとそうです。


その一行の中のひとりは、アメリカから帰国せずに、マサチューセッツ州アーカムに滞在し、当地にある大学で死体蘇生術の研究や後進の指導にあたったともいわれていますが、それはまた別の話……。