Monsters v.s. Deep Ones 夏休み0日め その1

(こんなネタを考えついて、書きためていました。書いているうちに季節外れになってしまったり、以前、掌編/140文字ネタに出てきた登場人物が全員集合しただけの感じだったり、いろいろアレではあるのですが、興味とお時間のあるかたは、おつきあいいただければ幸いです。)


*本作品の全文は、改稿のうえ「パブー」に引っ越ししました。作品ページはこちら。→ http://p.booklog.jp/book/1943



Monsters v.s. Deep Ones

 あの日以来、わたしたちは変わってしまった。
 もちろん、今でもわたしたち5人は親友同士だし、これからも、そうでありつづけるだろう。
 だけど、出会ったばかりのころのような、なにも知らず、ただ無邪気に笑いあっていた日々に戻ることは、もう二度とない。
 わたしが高校2年生だった夏休み。
 たった一夜のできごとだったけれど、あの事件は、わたしたちの中に大きな痕跡を残していった。


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「せっかくそのために集まってるんだから、ちゃんと夏休みの活動計画決めよう」
 そう言って、前にある黒板のところに立った二本お下げの眼鏡っ娘は、体はちいさいけれど頭脳明晰、成績優秀、頼れるみんなのまとめ役、わたしの幼なじみのニシちゃん。本名、西春穂(にしはるほ)。
「この部屋だと暑くって、なんにも考える気になんないぞ」
 制服のリボンをゆるめ、ワイシャツの襟もとをだらしなくはだけて、そこに右手に持った下敷きで風を送りこみながら文句をつけたのは、摩周花葉(ましゅうはなは)。あだ名はハナ。ベリーショートにした髪と、引き締まった体、日に焼けた肌、見た目どおりの運動万能少女。
「ほんと、暑いよねー。プールに行きたいな」
 本気で暑いと感じているんだろうかと疑いたくなるような調子で続いたのが、いつでものんびり、ほんわか、ふんわりな、植小草杏莉(うえこぐさあんり)。通称、杏莉。夏になってもあいかわらず、眉の上でまっすぐに切り揃えた前髪と、背中に流れる長い後ろ髪、というヘアスタイルだ。
「去年の夏休みは、なにをしたんですか?」
 はいはいっ、と手を上げて、ニシちゃんにあてられてから発言したのは、麗だ。洞糸井麗(ほらいというるわ)、というのがフルネーム。彫りの深い目もとに、ほんのりと赤みがかかって見えるほど白い肌。肩のあたりまで伸ばした軽く縮れた髪の毛は亜麻色で、光線のかげんによってはうすい金色に色を変える。
 それから、わたし。名前は、比久間(ひくま)りい。みんなからは、りいちゃんと呼ばれている。どうやってもまとまらない硬いくせっ毛と、同年代の平均よりも小柄なニシちゃんはともかくとして、ハナや杏莉よりも頭ひとつ以上背が高いのがちょっとしたコンプレックス。麗も上背はあるのだが、異国風ともいえる顔だちと、すらりとした手足がバランスよくマッチしている。わたしは単に図体が大きいだけだ。
「去年は花火みたり、ラーメン食べに行ったりしたよねえ」
 麗の質問に杏莉が答え、それは部活動のうちなのか? とハナに言われる。
 わたしたちは、海坂徳育(みさかとくいく)女子高校美術部の、たった5人の部員だった。ニシちゃん、ハナ、杏莉、わたしが2年生、1年生は麗ひとり。
 朝一番にあった終業式だけのために登校した今日は、さっきのニシちゃんの言葉にあったように、「夏休みの活動計画決定会議」という名目で部室に集まっていた。
 もっとも、特別な理由をつけなくても、放課後になると毎日部室にやってくる5人ではあった。そのうちで絵を描いたり制作をしたり、まともな美術部員らしい活動をするのは、杏莉とわたしだけなのだけれども。


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