Fog

アーカムの町は、深い霧につつまれていた。
町の中を流れるミスカトニック川の水面にたなびく淡い川霧程度であれば、冬の寒い朝などによく見られる光景であったけれども、今日の霧はそれとは様相が異なっている。
町全体がミルクをそそいだグラスの底に沈んでいるかのように、白い粒子に覆われているのだ。
石だたみの歩道はじっとりと湿り、ふだんよりも灰色さを増している。
そこに等しい間隔をあけて植えられている街路樹は、私がいる場所の二本先からもう、ぼんやりとした影としてしか認識することができない。
通りの向こうから、足音が聞こえた。やがて、霧の中に黒い人影が見てとれるようになる。
それが、一本先の街路樹のあたりまで近づいてきたとき、私は不意に気がついた。
その形が、人間の輪郭であるにはあまりに不自然なものであることに。
そして、一歩一歩を踏み出すときに、異様なほど大きく、左右に揺れていることに……。

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雨が降ったあと、急激に気温が変化したせいだと思うのですが、土曜日はこのあたりにはめずらしく、濃い霧がかかりました。実際、1ブロック先が見えなくなるぐらいのときもあって、運転が大変でした。

で、霧というと、また私の空想癖が頭をもたげてきて、霧の中から怪物が、とか、霧の中、墓場から甦った死体が……などと考えてしまって夜も寝られない。


そういえば、小学生のとき、家にあったH.G.ウェルズの「宇宙戦争」を読んだあとで、表を通るバイクの音や、自転車のブレーキの音がUFOが飛んでくる音や、ビーム砲の音のように思えてきて、ひとりで眠れなくなってしまったこともありました。

成長してないな、私。いや、最近はさすがに、怖い想像をしてしまっても、ひとりで寝られることは寝られるようになりましたよ。


いちばん上の写真は、学校の建物のひとつです。土曜日に撮りました。