@takayehのつぶやきまとめ

ついったーアカウント @takayeh での創作つぶやきのまとめです。「140文字でクトゥルー神話」やっていたはずなのですが、140字でもクトゥルー神話でもないものがまざってきたので、とりあえずこのようなかたちにしておきます。最近粗製濫造になってしまっているので、自重/精進しないとな……。


クトゥルーもの

「『どうですか旦那。インスマス製ですよ。効きますよ』 男は何度もそう言いながら、鞄の中味をちらちらとみせてきたのだが、私には最後まで、それが何であるのか、さっぱりわからなかった。」


「ひとり暮らしをしている妹から久々の電話。『別に姉ちゃんと話したいわけじゃないんだけど、バイヤキーの召喚のしかた忘れたから』。半年ごとに使うんだから、いいかげんおぼえろよ、とおもいながらも教えてやって、最後に『元気?』と聞いたら、『元気っ』とだけ答えがあって電話は切れた。」


アーカムの町を散策中、あまりに暑かったので、屋台で売っていたジュースを買って、一気に飲みほした。そのあと歩きながら、瓶に印字されている内容物表示をなにげなく読んでみると、添加物として "Colours out of space" と書かれている。外宇宙由来の色素?」


「鶴は千年、亀は万年、クトゥルーは、えぇ、何年だか知ったことじゃございませんが、昔から長生きするもんだと申します。ですが、こんな話もございまして…」
「…『えーんえーん』長屋の隣の長松が泣いております。『どうしたんだい』と八っあんが聞きますってえと、『ゆうべ夜店で釣ってきたクトゥルーが死んじゃったんだよ、えーんえーん』…」
「…『クトゥルーってのは、永劫の果てに死すらも超越するんじゃなかったの?えーんえーん』『生きてるもんは、いつかは死ぬんだ。めそめそするんじゃねえよ』八っあんがなだめても、『じゃあネクロノミコンは嘘なのかい。オトナはいつも嘘ばっかりだ』などと生意気なことを言って泣きやまない…」
「…そこで八っあん、『嘘じゃねえよ。クトゥルーが死を超越するってのは、嘘じゃねえ。嘘じゃあねえが、その亀は、今日が万年目だったんだろうよ』『亀じゃないよ。クトゥルーなんだよ、えーんえーん。えー…ふ、ふ、ふんぐるい、うむな……』『ふ、ふんぐるい……』おあとがよろしいようで。」


「現在は社・鳥居などの神道の象徴によって上書きされてしまっていることが多いが、体系的な神道の成立・普及以前から神が宿るとされていた地は全国に存在する。そのような土地の中には、人類がこの列島に渡ってくる以前、あるいは人類が地球上に誕生する以前から『神が宿って』いた場所もあるという」


「人間が涙を流すのは遠い祖先が海に棲んでいた名残であるという。眼球を保護するために塩分を含んだ水が不可欠なのだ。海の深みに暮らすものたちの血をより濃くうけついでいる場合、より多くの涙を必要とすることになる。だから私は泣き虫なんだ。」


別パターン:「人間が涙を流すのは遠い祖先が海に棲んでいた名残であるという。眼球を保護するために塩分を含んだ水が不可欠なのだ。海の深みに暮らすものたちの血をより濃くうけついでいる場合、より多くの涙を必要とする……だからっ、泣いてなんかいないってばっ! あっちいってよバカっ!」



ホラー。ホラー?

パターン1 「『四つの目で見たら、ふたつの目だけで見ているときよりも、いろいろなことに気づくかもしれないよ』と助言をうけたので、ふだんはつかっていない3個めと4個めの目をひらいてみたのだけれども、特に見えかたは変わらなかった。」


パターン2 「ひとりで見るだけだったらふたつの目。けれども、ふたりで見れば5つの目、3人で見れば9つの目、と昔から申します。」


「友人のアパートに遊びにいった。彼女が玄関のドアを開けてくれたあとも、そのまま入らずにいたら、『なに突っ立ってんの。どうぞどうぞ。遠慮深いなあ』と笑われたのだけれども、招き入れてもらわないと入れないのだよね。」


「移民一世の曾祖父が母国から持ってきたという人形が我が家にある。おかっぱの黒髪、ふくよかな顔、紅色の和服。十歳児ほどの大きさで、すべらかな肌をしている。ただ、目のあるはずの場所には、暗い穴がふたつ、うがたれているだけだ。曾祖父は祖国での弾圧を避けて太平洋を渡ったのだという」



空想科学

「迷い込んだ山の中で日が暮れた。助けをもとめた一軒家には老女と娘さんと幼い女の子が住んでおり、親切にも食事と宿を提供してくれた。夕食に出てきたのは、一口大に切られたつやつやした赤い生肉。かつおのお刺身、と娘さんは言った。山奥なのに、とれたてのように新鮮だった…」
「…そのとき私は、いつ終わるとも知れない旅の途上だった。先を急ぐわけでもないので、お礼に家の修理などを手伝っているうちに3日ほど経った。食事は毎回かつおの刺身。豊富さと新鮮さに驚いて訊ねてみると、最初は皆、口を濁していたが、3日めの夜のこと、娘さんが地下室を見せてくれるという…」
「…地下には薄暗い部屋が一室あって、その中央には無影灯などが備わった作業台らしきものが設置されている。かすかに血のような臭いがする。四方の壁には巨大な水槽が埋め込まれており、様々な発達段階のかつおが泳いでいた。娘さんが口を開いた。『ここにいるのは雌ばかりです』…」
「…それからさらに数日を過ごすうちに一家とも仲良くなり、長い滞在をすすめられもしたのだが、私は旅を続けることにした。出立の間際、娘さんが私に向かってちいさな声で何事か言った。聞こえなかったふりをして歩き去ったのだけれども、その言葉がずっと頭の片隅に貼りついている…」
「…彼女はこう言ったのだ。『旅の目的を果たしたら、ここに戻ってきて暮らしませんか。もし、そう望むなら、私が貴女の娘を宿すことも、できるのですよ』…」
「…『親から採取した細胞に特殊な処理を施して卵に注入すると、子が発生します。生まれた次世代は、親世代と完全に同一の遺伝子を持っています』かつおが泳ぐ水槽に囲まれた地下室にいたとき、彼女は説明してくれた。『私たちはそのようにして、この技術を守り続けてきました』」


「小学生のころ、傘を持っていった日はいつも、向かいの家の幼なじみとチャンバラをしながら下校したものだ。彼女は、開いて盾がわりにしていた傘を瞬時に閉じて攻撃に転じる技を編みだし、好んで使っていた。小学校卒業前に僕は親の転勤で引っ越し、それ以来彼女には会っていない…」
「…先刻、偵察任務中に遭遇し、白兵戦になった敵のパワードスーツ小隊の中に、切っ先のレーザー部分を拡散させたり収縮させたりできる特殊仕様の剣でよく似た防御・攻撃シークエンスを繰り出してくる一員がいたのだけれど、まさかな。そんなことを考えながら僕は高機動服のヘルメットを脱いだ。」


「『超空間航法を緊急停止する。キル・ボタン押下!』『艦長、問題があります!』『どうした!?』『‘切る’ボタンが見つかりません!』」


「あなたが1989年4月以降に製造された型の場合は警報は自動的に受信されます。(聴覚センサに警報音が流され、内容が視野の右下に表示されます。) それ以前に製造された型で警報を受信するには別途外付ユニットが必要です。なお、製造年月日コードは、あなたの首の裏側に刻印されています。」


「また蝉の鳴かない夏がやってきた。かつて世界を『深刻な食糧難』が襲ったとき、この地に暮らしていた人々は蝉とその幼虫に群がり、食べ尽くした。『危機』は1年足らずで終息したのだが、痕跡はずっと残るのだろう。そして、その狂騒に満ちていた夏のことを我々に思い出させるのだ。7年周期で。」



チャック・ノリス・ジョーク

「『ネクロノミコン』に、『死さえも死に至らしめるもの』の存在を示唆した一節がある。『古き神々』について述べた文章である、とする解釈がこれまで一般的だったが、最近の研究で、その解釈が間違っていたことが明らかになった。この一節は、チャック・ノリスのことを記述したものだったのだ。」


「『セガールよりいいね』と君が言ったから 8月4日はチャック・ノリス記念日」



そのほか

長い長い140文字物語: 「ある日おばあさんが庭で洗濯をしていると、空から1枚のふんどしが落ちてきました。『おや、これは都合がいい』おばあさんは取り込もうとしましたが、引っ張っても、引っ張っても、いっこうに終わりがみえてきません。それは長い長いふんどしだったのです。」



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