カフェイン

3月の、ある晴れた土曜日のことだった。
他所の地方から来たばかりの者には、まだ厚手の上着が恋しくなるような気温であったけれども、長い冬を耐えてきたアーカムの住人には、これっぽっちの春さえも嬉しく思えるものらしい。街はすこし華やかな色の服で着飾った人々であふれていた。
カフェ・ルナの、ミスカトニック川に面したオープンデッキも、例外ではない。そのうちの一席に、エスプレッソを前にひとり座って、ニコラス・シュッツは新聞に目を通していた。彼は、この町にあるミスカトニック大学で、生物学の教授をしている。生まれと育ちはアーカムだったが、大学、大学院時代をカリフォルニアで過ごした。町へは、去年の夏にミスカトニック大学に赴任したのを機に、戻ってきたばかりなのだ。10年ほど違う場所で暮らしているあいだに、彼の体はこの地方の気候をすっかり忘れてしまったようで、彼は、今日のあたたかさくらいでは、どうしても、着込んだ重く茶色いジャケットを脱ごうとは思えなかった。


ふと、周囲から聞こえていた会話や笑いのさざめきが消えたような気がして、彼は紙面をめくる手をとめて顔を上げた。見まわすと、あたりの人々の視線はすべて、川のほうに釘づけになっている。その方向へむきなおった彼の目に映ったのは、ミスカトニック川の水面が、流れの真ん中のあたりで、不自然に丸く盛り上がっているさまだった。


その場にいる者が言葉を発する間もなく、盛り上がった部分は、素早い動きで彼らがいるほうの岸に寄ってくる。そして、大きく水飛沫が立ったかと思うと、中から何かが飛び出してきたのだ。それは、人型で、人よりもわずかに大きな肢体を持った、灰色の物体だった......。


翌日から、ミスカトニック川沿いにある建物が襲撃されたり、夜の間に荒らされたりする事件が連続して発生した。レストラン、ドーナツショップ、食料品店。
被害にあった場所に共通するのは、コーヒーが置いてあること!? 
コーヒーがなくなったら仕事にならない!
ニコラスは、幼なじみで、いまはアーカムで警察官になっているジャックとともに捜査を開始する。
ジャックもまた、大のコーヒー党だったのだ。


はたして、ふたりは事件を解決することができるのか? そして、犯人の意外な正体とは?


Coming soon!(うそ)

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昨日、ニシちゃんと話しているときに、彼女が言っていたのですが、人体に入った薬品(というとおおごとっぽいですが、つまり、私たちが飲んだ医薬品)というのは、かなりの部分が体内では処理されずに、排出されているのだそうです。で、だいたいの場合、「排出される」というのはトイレにいく、ということなので(きたなくてすいません)、それらは下水を通って、川や湖にたどりつくわけですけれども、下水処理場というのは、細菌や汚染物質は処理できるけど、そういう薬品類は処理できない(しない)ものらしく、そうやって環境中に流出した薬品というのはけっこうな量になるんだとか。


そこで私が脱線して、じゃあカフェインはどうなの? とか言いだしたので、話がおかしい方向に。カフェインが処理されずに環境中に流出しているとすると、コーヒー飲む人は薬飲む人よりも多いはずだから、かなりの量になるんではないか。だとしたら、川にいる謎の生物がその影響で凶暴化(人間でもコーヒー飲みすぎるとハイになりますし)して、なおかつカフェイン中毒になってるから、コーヒーをもとめて川沿いのカフェを襲いはじめる......、とかなった結果が冒頭の文章です。(そもそもなんで、川に謎の生物が棲息しているのか、とかはあまり追求しないでください。)


誰か、こんなおバカ映画をつくってくれないかな。あまりにおバカすぎるから無理か。