短編集2冊

書評のようなものを書くのはとっても苦手なんですが、冬休みからぼちぼち読み続けてきた本を最近読み終えたので、感想を簡単に。

Magic for Beginners

Magic for Beginners

ケリー・リンクの短編集。ヨーロッパからの移民だった祖母の思い出話、郊外に広い家を買った一家、近郊の住宅地での若者のパーティ、コンビニエンスストアの夜勤、といった、(アメリカでは)ふつうにありそうな光景の中に、何の説明もなく異世界を放り込んで、そのまま展開する話が多いという印象を受けました。(そうじゃなくて、はじめからぶっ飛んでる話もありますが。) それが魅力だとおもうし、私は好きだけど、明確な説明やオチがないとダメ、という人にはダメなのかも。個人的には、冒頭に収録されている"The Faery Handbag"がおもしろかった。「ヨーロッパからの移民だった祖母」の話です。

日本語訳版はこちら。

前作(これも短編集)はこっち。基本的な傾向は変わってないとおもいます。

Stranger Things Happen: Stories

Stranger Things Happen: Stories

スペシャリストの帽子 (ハヤカワ文庫FT)

スペシャリストの帽子 (ハヤカワ文庫FT)


もう一冊。

押入れのちよ

押入れのちよ

こっちは日本のです。シカゴに行ったときに友人に借りました。荻原浩の短編集。日本の現代ものの小説は、とても久しぶりに読みました。

物語の出発点は、こちらも、郊外にに引っ越してきた家族、リストラされた若いサラリーマン、倦怠期の夫婦など、(日本に)よくある光景になっていて(そうじゃない作品ももちろんあります)、そういう意味では上のケリー・リンクの短編集ともなんとなく似ているとおもいます。ただ、リンクとの大きな相違点は、こちらは明確なオチがかならずついていること。それがジャンルの違い(ファンタジーと現代小説)ということなのかな。話としてはきれいにまとまっているものが多いけど、オチまでの持っていきかたがパターン化しているので、連続して全部読むと衝撃が薄れるかも。表題作の「押入れのちよ」がいい話でした。


興味深かったのは、リンクの"Stone Animals"と、荻原浩の「老猫」の扱っているテーマがとても似ているということ。設定や展開は全然ちがいますが、どちらも「郊外の(あこがれの)マイホームに越してきた典型的な核家族(の崩壊)」、「仕事人間の夫とそれ以外の家族(妻、子供)との隔絶」を描いた作品なんですね。